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関西カタルーニャセンター主催のスペイン語絵本翻訳コンテスト『La gota de agua』の翻訳で2次審査に進み氏名を掲載していただきました


関西カタルーニャセンター主催のスペイン語絵本翻訳コンテスト

『La gota de agua』の翻訳で

2次審査に進み氏名を掲載していただきました。

ありがとうございました!


拙訳文は下部に載せています(転載はご遠慮ください)


『La gota de agua』

illustration Inês Castel-Branco

based on Raimon Panikkar

(Akiara books出版)



『水のひとしずく』

作 イネス・カステル=ブランコ

原作 ライモン・パニカー

翻訳 尾崎実帆子


はじまりは、みんな、水。


みんな、水から、生まれたんだ。


水ってね、生きているんだ。

ほら、花や草や、どうぶつや人とはちがって

水ってね、ずうっと生きつづける。


水ってね、そう、ここにいるんだ。

いろんなところへ行ったり、形を変えたりしても

もとは、大きなひとつの水なんだ。


水には、きれいにする力があるってみんな信じてる。

モノも、体も、気持ちも、きれいにしてくれる。

みんなの心の中も。

水の力で、また、生まれかわることができるんだ。


お祝いするとき、神さまに会うとき、なにかを信じるとき

水で体をきれいにする。水で心をきれいにする。


でも水ってね、ときどき、あばれるんだ。

なにもかもをこわして、そうしてのみ込んでしまう。


生きることは、ひとしずくの水のゆくえに似ていると言う人もいる。


ひとしずくの水が、海に落ちたとしたら……

なにもかもがのみ込まれて……死んでしまうってこと?


海に落ちた、水のしずくはどうなってしまうの?


みんな、水のひとしずくなの?


みんな、したたり落ちていくしずくなの?


海に落ちていく、ひとしずくの水はどうなるのか、といえば

ひとつ、ひとつ、の水のしずくは海のなかで

ひとつ、ひとつ、ではなくなっていく。


ポチャ~~ン……


みんな、みんな、この小さなひとしずくの水だとしたら

みんな、みんな、いつか川となって大地をはしり、やがて海に流れ落ちていく。

海にとけていく、海にのみ込まれていく。


じゃあ、そのしずくはどうなるのか、といえば

しずくはどこへ行こうとも、どんなに形を変えようとも

しずくはずっとそこにあるんだ、ひとしずくの水だったときと変わらずに。


いつか海にとけていこうとも、ひとしずくの水は、水のまま。

ひとつ、ひとつ、だったしずくが

ひとつ、ひとつ、ではなくなっても。


西のくにでは、人はそれぞれ小さな水のひとしずくだと言う人もいる。


水のひとしずくがかわいたら、それでおしまいって言う人もいる。


すべての水のひとしずくは、海にとけてもずっと生きていくと言う人もいる。

水のひとしずくだったことを忘れることなく。


東のくにでは、水のひとしずくは、もっと大きなものなんだって言う人もいる。

水はすべてのはじまり。みんな、水から、生まれたと。


水は空にのぼり、雲になり、またひとしずくの水になる。

水は大きな大きなひとつのもの。


でも水は、いつも同じってわけじゃないよね。

やけどしそうにあつかったり、

ひやっとつめたかったり、

あまかったり、しょっぱかったり、

すきとおっていたり、にごっていたり。


水はそのときどきで、味もちがう、見た目もちがう。

そう、みんなみたいに!


みんな、いつか海に流れつく、ひとしずくの水。


食べごろのくだもののように、

大きくひらいた花びらのように、

落ちていく。


落ちていく、変わっていく、消えていく……でも水は、水のまま。


ひとしずくの水が、大きな大きな水をはこんで、

この星の水をたやさないように

みんなそれぞれが、大きな大きな命をはこんで、

この星に生きているんだね。


(了)


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