「月にトンジル」佐藤まどか (著), 佐藤真紀子 (イラスト)
幼少期からいつも一緒に遊んでいた男女4人。
小学6年の途中でダイキが、親の転勤にともない遠くへ引っ越す。
残った3人になると話は続かず、一緒に遊ぶことも減り、ぎくしゃくしていく。
「午前3時に電話して」小手鞠 るい (著), 大庭 賢哉 (画)
小学6年のときリレー選手を務め、1位となったことで絆を感じた男女4人。
あるときみなみは、他の3人に黙って引っ越し転校してしまう。
辛い気持ちを抱えるみなみは、想いを込めて架空の物語を綴る。
どちらも小学生~中学生にかけての友人関係の変化を描く。
バランスを保っていた関係が、ひとりの欠如によって微妙に揺れ動く。
前者は、“親の転勤で引っ越す”という以上の意味合いはないが
子どもだけでは行き来することのできない距離。
後者は、引っ越すことになった理由そのものが暗い影を落とすが
電車で1時間ほどの距離のため、1冊の本をもとに細い糸がつながる。
前者は、一貫して主人公の男子トールの目線で4人の関係が描かれる。
裏側が見えない「月」と、脂身の浮いた「トンジル」という比喩で
友人たちの心に思いを巡らせる。
後者は、4人それぞれの立場で交互にその状況を描く。
フィクションという形でしか生き辛さを綴れない主人公みなみ。
性暴力やパワハラなどの複雑な題材も含みながらも
友人たちの率直な友情に救いがある。
どちらも、これからも彼ら彼女らが悩みながらも
こんな友人関係が礎にあれば、この先も生きていけると思わされる。
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